アンティーク真空管ラジオ、真空管アンプのTRN

以下の記事は2008年に LifeSound の板倉社長と対談した時の要約です。ご参考ください。

メロディ真空管アンプの魅力について


TRN(小林)
1960年代から真空管を使ったラジオ、アンプ、無線機などをいろいろ使ったり、見たりしてきました。今まで見た、立体配線を採用している日本や外国製品の中で、配線の美しさで一番印象に残っているのがドイツのグルンディヒのポータブル・ラジオですが、メロディのS2AやS34の配線や部品の配置を見たときには大変驚きました。

海外のオーディオショーでアンプをひっくり返して、内部を見せているのは初めてでしたし、それだけ配線技術や部品には自信があることを見せていました。アンプは中身を見れば、大体どのような音が出るのか想像がつきますが、メロディのアンプはそれまでの、雑音を出さずに鳴れば良いという真空管アンプの配線技術を大いに越えたものに感じられました。特にプッッシュ・プルアンプなど電流が多く流れるアンプには整流にも真空管を使うのが理想ですが、安定して大電流が取り出せるシリコン整流器を使っていますが、このノイズ対策がすごい。電解コンデンサに直付けして使っている。電解コンデンサのアルミ箔をヒートシンクとして使っている。

高周波ノイズ対策と電解コンデンサの暖め、、、、全くうまく考えてあります。 その他、部品の放熱なども大変良く考えられている、、、それにトランス、最高の鋼材と最新の大型機械類を使って自社製造している。コアのカットや難しい締め付けなんかもノウハウを持っていて製造している。真空管アンプではトランスが基幹部品なので、なるほどと思いました。メロディのアンプを見て、持って(重い) これは本物だと感じました。もし自社でこのような製品の製造をする、、、、としたら いくら設備費がかかるのか? それにストックしている部品数、、、私も個人的に多くの部品や真空管を持っていますが、真空管アンプを製造するための、ストック部品(現在では製造していない部品も多い)を同一種類で多く保有している、、、全く驚きました。

LS(板倉)
真空管アンプの魅力を知り尽くしている小林さんだから深く理解され、だからこそ選択されたということがよく分かりました。 次に真空管アンプでは真空管という消耗する部品を使用します。真空管の寿命などが心配で音質は素晴らしいが手が出せないというお客様もおられます。我々は毎日使用しておりますが、それほど気にはならないのです。(笑い) かなりな時間を使用しています。ライフサウンドでは1年くらいで一般ユーザーの方が御使用になられる3倍から5倍くらい平気で使用してしまいますが、特に問題はありません。また、トラブルがあったら交換すれば、再度良いサウンドが楽しめると気軽に考えていますが、これらの真空管の寿命などについて教えてください。

TRN(小林)
一番多い質問が真空管の寿命に関することですが、真空管は人間と同じで生き物です。これはトランジスタなどの半導体も同じです。熱をあまり出さない分、半導体の方が故障に対しては有利ですが、半導体も結構故障します。ガリガリ不安定なノイズを出したりします。また半導体自体の寿命は長いのですが、回りの部品の劣化や故障で半導体に過電流が流れ、その結果、半導体が劣化し、故障することは良くあります。一度でも過電流が流れると半導体は不安定になり、故障へと進みます。ところが真空管は無理がききます。これは人間と同じ、少々無理をしても、一度休めば(冷やせば)、何事も無かったように、、、、人間がたまに熱を出すのと同じで、処方してやればよいのです。神経質になる必要はありません。真空管が壊れる、、、、というのは真空管式テレビの時代にテレビがよく故障した、、、という経験をお持ちの方が多いからです。しかし私は故障したテレビは映像が写らなくなっただけで音は出ていませんでしたか?と聞くことにしています。すると100%近くの人が、そういえば音は出ていた、、、と言われます。 真空管を音声増幅の回路で使う限り、ほとんど故障はしないものです。また、現在は真空管以外の部品の精度や信頼度もずい分向上しました。テレビでは真空管をパルス回路や発信回路などに使い、また映像を出すために高圧(17kV程度)も使っています。高圧を扱えば故障も増えます。 でも真空管は人間同様、寿命があり一般的に5,000-7,000時間と言われていますが、人間の寿命と同じで、これ以上使えるものもあり、ダメなものもあります。劣化してエミッションが弱くなっても、ほとんどの真空管アンプは自動的にバイアス電圧の調整をして最適な状態になるよう設計されています。それでも歳はとり劣化しますが、耳で聴く限り、真空管の劣化は分からないものです。真空管が劣化すると、ガラス壁が黒ずんできたり、鏡の裏のように銀色に光っていたガラス面のゲッターが薄くなったりします。真空管は交換すれば良いのです。だからソケットが使われています。交換する必要が無いのなら、ソケットなんか使わず、直付けしたほうが接触による故障もなく安上がりです。


LS(板倉)
さて次に、メロディ社のアンプは真空管の違いに合わせて沢山のアンプを製作していますが、真空管の違いによる個性差や、それぞれの魅力について教えてください。


TRN(小林)
真空管アンプはフォノ、プリ、メイン もしくは プリメインのアンプがあります。メロディでは プリ と メイン(モノブロック) ならびに プリメイン(インテグレート)アンプ を 製造しています。真空管の違いで分ければ 3極管(直熱式) の 2A3、300B と 845 があり 2A3はプッシュプル、 300Bと845は シングルとプッシュプルの構成になっています。直熱3極管、特にシングルではパーワーはあまり取れません(除 845)が繊細な音を楽しんでいただけます。プッシュプルにするとダイナミックレンジも充分にとれ、普通の感度のスピーカー(85デシベル以上)で各ジャンルの音楽が楽しんでいただけると思います。昨今は真空管アンプは300B、300と言われるお客さんが多いのですが、私は2A3をお奨めします。2A3は1930年代に開発された往年の著名球で、昔はハイファイ イコール 2A3でした。家庭でも高級ジューク・ボックスでも。私が2A3をお奨めするのは、まだ2A3は内外の新品の真空管(オールド・ストック)が1本 1万円から1万5千円程度で 購入出来るからで、各社の真空管を収集して、音の違いや趣を楽しむ事が手軽に出来ます。このようなことは300Bでは出来ません。価格的にも製造企業別にも。 845は別格です。もともと映画館などの大ホールで使用することを目的に開発された球です。プレート電圧も1000ボルト以上必要ですから、使うにはそれなりの理解と支出を覚悟しなくてはなりません。但し、暗闇からスーッと立ち上がるような音のエネルギーはさすが845だといつも思います。直熱3極管の他に、五極管(6CA7/EL34)とビーム(5881S/6L6GCやKT88/6550)の高出力アンプがあります。それぞれ片チャンネル 35-50W クラスのアンプです。これらのアンプは駆動するスピーカーを選びませんから、大変使いやすいアンプだと思います。最近のメロディのアンプでは出力が4,6,8,16オームに対応できるようになっていますが、スピーカーの負荷は神経質になる必要は全くありません。6Ωのスピーカーであれば 4か8、 どちらの端子でもかまわないのです。理論上は4Ωにつなぐほうが電流が多く流れ、低域がのびると思いますが、耳ではなかなか判別は出来ないとおもいます。 メロディのアンプでは有りませんが、5極管の場合は3極接続にして、5極管でありながら3極管の音を楽しめる事も可能です。 またウルトラ・リニアー接続しして音の直線性を向上させている機種も他社にはあります。(TRN スーパー12など)。メロディの設計ポリシーはあくまで直球勝負。素材の持つ味をそのまま引き出す構成になっています。

LS(板倉) 
そうなると全てのメロディ社のアンプが欲しくなってしまいますね。それぞれに、魅力があるのですから。コスト的にも随分リーズナブルな印象があります。これがソリッドステートのアンプですと、2から3倍の値段をつけて売られてしまうと思います。この点についても教えていただけますか?

TRN(小林)
真空管アンプの使用部品数は半導体アンプの10分の1以下では無いかと思います。その分部品代がかからない。また修理も少しの電気の知識があれば出来ます。ほとんどの半導体アンプは10年ほどで大型ごみになりますが 、真空管アンプを10年後に捨てる人はいないしその価値も下がらない。リセールバリューが高いのです。真空管アンプを捨てると聞いたら、絶対半導体のアンプのほうが良いよ言っている人も、それでは欲しい、、、と言ってきます。

LS(板倉)  
よく分かりました。我々は相当にお買い得な製品をお奨めしているということですね。真空管アンプ自体の寿命について教えて下さい。

TRN(小林) 
前にもお話ししましたが、半永久的です。もちろん故障したり劣化した部品は交換してやる必要があります。そして何よりも 少しの電気の知識があれば修理が出来ることです。巨人軍ではありませんが「真空管アンプは不滅です」。

LS(板倉) 
となると部品が存在する限り使用することが可能ということですね。これもまた嬉しいことです。気に入ったアンプを長く楽しむことが出来るのですからね。
それか小林さんから何かユーザーの皆様にお伝えされたいことがあればお願いします。

TRN(小林)
心配せずに、真空管アンプをお楽しみ下さい。でも真空管アンプと半導体アンプを比較する事などはせずに。真空管と半導体が生まれた時代も全く違いますし、比較するには真空管にハンディが有り過ぎます。どなたかが話されていましたが半導体アンプと真空管アンプを比較するという事は、新幹線と蒸気機関車を比べるようなものだと。ほのぼのとした灯を燈しながら、ゆったりととした安らぎを与えてくれ、ヒーリング効果が大いに期待できるのが真空管アンプと思います。また熱を出しながら一生懸命に働く、なんとなくわが身を見ているようで、、人間的ではありませんか?

最後に メロディのアンプのキットはないのですか?とお客さまから良く聞かれますが、残念ながらキットはありません。
メーカーでは配線、組立て技術にノウハウを結集し、検査を経た完成品を供給ているからです。真空管アンプのキットは数多く有りますが、「キットは組み立てる喜びを経験するもの」とご理解下さい。

LS(板倉)
真空管と半導体のそれぞれのアンプを比較してしまうのが、私たちの仕事でもあります。(笑)真空管アンプにハンディがあるとは、私は感じないのです。むしろ、素直に聴いていると、どうにも半導体アンプが逆立ちしても敵わないところがあるのですね。それは音楽が音楽として楽しく味わえるのです。養殖の魚ではなく天然の魚を刺身で頂いているという感じなのです。(笑)それから低音の表現が違いますね。無理やり力で押すのではなく響かせるように表現します。これでは楽器に近い鳴り方をしてくるように思います。現代でも名盤とか名録音と言われる、その殆どが真空管が関係しているものが圧倒的に多いと思います。ですから半導体アンプでは「?」でも、真空管アンプで聴くと「そうそう、これこれ!!」ということが良くありますね。本日はメロディ社のアンプの魅力について、技術面からいろいろと教えていただきありがとうございました。