
現在の真空管オーディオに使われている真空管のほとんどが1930-40年代(昭和5-15年)に開発された真空管であることはご存知ですか?真空管(2極管)が発明され、3極管の増幅作用が真空管にあることが発見された1900年代の始めから、アメリカでラジオ放送が本格的に始まった1920年(大正9年)代の初めまで、真空管はあまり進化しなかったのですが、1930年(昭和5年)に入るとアメリカやヨーロッパでは各社が競って真空管の開発や大量生産を始め、多くの種類の真空管が開発され全盛に至りました。
白熱電球を発明したのはアメリカ人のエジソンですが、金属を真空の中で熱すると、金属の表面から何かが飛び出すことが発見され(エジソン効果)、真空管の発明に大きな貢献をしました。
1904年(明治34年)にイギリス人のフレミングが世界で最初の真空管(2極管)を発明します。フレミングは白熱電球のフィラメントを金属板(プレート)で覆い、その金属板にプラスの電気をかけた時に、フィラメントと金属板の間に電気の流れが発生することを発見し、真空管の原型となりました。
その2年後の1906年にアメリカ人のドフォーレが、フレミングが発明した2極管のフィラメントと金属板の間に、はしご状の格子(グリッド)をたて、そこにマイナスの電気をかけると、フィラメントから流れ出た電流が、プレート側では大きく変化することに着目、特許を出願しました。これが真空管の3極管です。
プレート側の電流の変化は、抵抗器やコイルなどの負荷で、電圧の変化にかえることができますので、少しのグリッド電圧の変化でプレート回路につけた負荷の両端の電圧が大きく変わることにドフォーレは気づいたのです(真空管の増幅作用)。
これは水道の蛇口にたとえれば、水道管の水がフィラメントで、水量を調節する栓の回転がグリッド電圧の変化、水道栓から出る水量がプレート電流にたとえられます。少しの栓の回転(グリッドのマイナス直流電圧の変化と同じ働き)により、水量(電流の量)が大きく変えられるわけです。
初期の真空管は直熱式と呼ばれ、フィラメントを熱し、直接電子を放出させていましたが、4極管の発明と同じ頃に、電子が出やすい金属箔でフィラメントを覆い、その覆い(スリーブ)をフィラメントで暖めることにより、熱電子の放出の効果を高めた真空管が開発されました。傍熱型です。
傍熱型の真空管はその後、主流になりますが、動作するまでに10秒前後かかり、傍熱型の真空管を使ったものはスイッチオン後すぐに働きませんでした。
3極管が発展しつつあった頃のアメリカは第1次大戦(1914-1918)に参戦中で、真空管に関する技術は機密でしたが、製造や開発をアメリカ国内の多くの電気部品メーカーと契約し、品質と納期を競わせました。
生産された真空管も軍で使うのみならず、真空管を使った電子回路の応用、開発を広く一般から募り、(アマチュアもしくは実験に使用のこと)と印刷されたラベルを貼った真空管も商品として販売していました。その結果、真空管を使った色々な電子回路が一般人も参加して考案され発展しました。
真空管はその後、受信用と送信用の3極管に分かれて進化、発展し、4極や5極管などの多極管へと発展します。しかし3極管の特許出願が1906年、4極管が発明されたのが1927年ですから、3極管が発明されてからの20年間は3極管の発展と改良の歴史で、現在でも使用されている3極管を使った多くの回路が開発されました
1930年代は真空管のサイズが大きく、組込む電極も大きくてよい、ナス管やST(スタンダード・チューブの略)は各種のものが開発され、電極も3,4,5極と多極化し、色々な用途の真空管が製造されました。お馴染みの2A3、45、300B、350A/B、6L6、KT66、KT88などの真空管はすべて1930年代に開発され、現代の真空管式アンプにも使用されている真空管です。
1930年代後半から、1,000種類以上の真空管が開発、製造され、性能や製造技術は大いに進化しました。1940年になると真空管の小型化には目を見張るものがあります。真空管が発明された当時は丸い電球の形をしていたものが、ナス型のガラス管、電極を支える肩のあるST管(ダルマ管)、ガラス管(GT管)、金属管、そしてベースまでものすべてをガラスにしたミニチュア管(MT管)などで、これらは全て現代の真空管アンプに使用されています。
6CA7/EL34 6BQ5/EL84 6BM8/ECL82
最近見かける、化粧箱入り新品の欧米著名ブランド真空管について
(最近お客様からの相談、問い合わせが多いので掲載します)
(真空管を交換する場合の注意事項)
旧東欧諸国やロシア、中国などでオーディオ用真空管が現在も製造され、その品質も最近は格段と向上し、信頼性も高くなりました。品質の向上と強い需要に、商魂たくましい北米の電子部品商社が現在は活動していない、もしくは休眠中の真空管メーカーの商標(ブランド)の権利を買い取り、米国やイギリスの著名真空管ブランドの名前をつけた、箱までオリジナルとそっくりな化粧箱入りの真空管が日本でも販売されるようになりました。これらの真空管は1990年代の中頃から、シンガポールや香港、アメリカなどでは数多く販売されているのを見ましたが、本物志向の強い日本ではあまり見かけませんでした。
これらの真空管の信頼度はたいへん高いのですが、電極構造やゲッターリング、マイカ板の構造を見ると、オリジナルの真空管(もしくは本当の復刻版)とは異なります。今、世界各地で真空管オーディオがブームになっていますが、年を経てこれらの真空管が本物のオリジナル、ビンテージ球に交じり、にせもの、本物と、物議をかもす事になるのではないかと思います。現在製造されている真空管の性能がオリジナルに近づき、またオリジナル真空管と似た性能のものを製造することが可能になったので、北米の商社がプロデュースした企画商品です。販売元の北米の商社はユーザーとの真贋リスクを回避するために、真空管のガラス面に「製造国」の印刷を入れているのは、正直といえば正直ですが、、、、復刻版であればやはり完全に復刻し、安く供給して欲しいのがユーザーの願いです。
真空管が華やかであった頃は、真空管メーカーは各社からOEM生産を受け付け、生産工場は同じでも、メーカーロゴの異なった真空管が多く発売されていました。日本のメーカーもアメリカのRCAやシルバニアなどに多くの真空管を供給していました。また上記の北米地域の電子部品商社は俗に言う「商社ブランド(自社ブランド)」の真空管を数多く発売していましたが、これはテレビに使われる真空管が中心で、現在のように、旧著名メーカーの商標を買い取り、印刷したものでは有りませんでした。

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オーディオ用真空管について

真空管の生い立ち