アンティーク真空管ラジオ、真空管アンプのTRN

真空管アンプに使われている主な出力管について

300B 欲しくても1985年までは市販されていなかった真空管

今でこそ直熱3極出力管の代表のようにランクされる真空管ですが、つい最近の1985年頃までは欲しくても入手不可能な真空管でした。特にウエスタン・エレクトリックの300Bは高価であるとかの問題ではなく、雑誌などには製作記事は時折掲載されるものの、肝心の300Bが入手出来ず、秋葉原などの真空管販売店の得意客になり、300Bが出たら連絡してもらうという様な手順を踏んで購入出来る真空管だったようで、300Bを持っている事自体がステータスの時代だったようです。

300Bは1933年に開発された300Aの改良型で、もともとは映写装置の電源回路の制御用として開発されたと聞いています。その後映画がトーキー化され、映画の音声増幅用として使われたようです。

当時の映画館の映写や音声設備はレンタルが全てで、そのメンテナンスなどの業務を全て行っていたのがウエスタン・エレクトリックの関係会社で、設備に使われていた真空管などの消耗品は全て保守マニュアルに従い、規定の使用時間が来れば交換されていたとの事です。

もちろんこれらの補修用の真空管が市場に出回ることなど皆無で、関係者以外の入手は困難であったそうです。私は、1950年代に日本で製造された岡谷のHF-300B Auditron以外、1980年前半まで、ウエスタン・エレクトリックの純正300Bは日本でも海外でも見たことはありませんでした。

カナダやイギリスなどでウエスタン・エレクトリックの関連会社が300Bをライセンス生産し、300Bや4300Bなどの名称で製造していましたが事情は同じだったようです。

憧れのウエスタンの300Bも1988年以降、ロシア、東欧、中国などで類似品の生産が始まり、それらの真空管を使ったアンプのキットや完成品が安く発売されるようになると、ウエスタン・エレクトリックの純正品ではなくても、安くていつでも入手できる環境が整い、300Bを使った真空管アンプが爆発的に売れたわけです。

これらのウエスタン・エレクトリック以外の300Bが大普及したもう一つの理由がフィラメントの直流点火で、大いにハム音などの直熱式真空管アンプの質的向上に貢献しました。このことが可能になったのはシリコン整流器の発展で、直流の大きな電流が安定的に取り出せるようになり、真空管アンプのハム音対策やS/N(信号対雑音)比の向上に大いに貢献しました。シリコン整流器の発明までは真空管アンプの出力管のフィラメントを直流点火するアイデアは有ったのですが、実用的ではありませんでした。

現代の真空管アンプはまさしく1930年代に開発された真空管に現代の半導体素子が電気を供給し、お互いのメリットを生かした使用方法が使われていると言えます。

ロシア、東欧、中国などで生産された300Bも初期の物には問題も多く有りましたが、最近は改良も進み、ウエスタン・エレクトリックの300Bと比較しても遜色の無いものも出てきました。