伊藤真哉 三重 ヒューマン「脱プロダクト(製品)志向の派遣技術者」とは。アップルが売っているのは、サービスであり、デザインであり、ライフスタイルです。

脱プロダクト時代

テレビ局や個人がiPodに豊富なコンテンツを盛んに提供しています。この「ポッドキャスティング」サービスは、ブームを超えて、文化に昇華しつつあります。米国ハリウッド映画業界にも大きな影響を与えると予想されています。

日本の電機メーカー

日本をはじめて他のエレクトロニクス・IT企業は先を越された形となりました。ハードウエアとのバリューチェーンを築きながらコンテンツサービスに乗り出す、という自ら描いたシナリオをアップルに先に、そのまま演じられたことです。

ただ、日本の電機メーカー(製造業)も類似の取り組みをしてきました。例えばソニーは、1997年にすでにiPodと同じ構造のハードディスク・プレーヤーの試作機を完成させていました。1998年には米国サンディエゴでレコード会社と共同で音楽配信の実証試験も行なっていました。

DRM基本特許を握る企業を買収

しかも、契約権の管理や金融決済を司るDRM(デジタル著作権管理)のソフトウエア開発で先行。2002年には基本特許を握る米インタートラスト社の買収もすませました。当時、DRMすら持たないアップルのことなど、歯牙にもかけていなかった、というのが本音でしょう。

ソニーには自負があったのでしょう。幅広い要素技術を抱え、多種多様な製品を開発し、しかも映画・音楽事業も手がけているのは、世界を見渡してもわれわれだけだと。

実装に至らず

確かに、その潜在力を鑑みれば、当時の出井伸之CEO兼会長ら経営陣の成長戦略の方向性は正しかったといえます。失敗の本質は、それを具体的戦術として実装できなかった点にあるのでしょう。

iPodをウィンドウズに開放

ただし、そこに宿命的な悲運があるとすれば、それはソニーの潜在力と過去の成功体験があまりに大きかったことでしょう。一方、捨て身のアップルは侮蔑さえしていたウィンドウズにマックとiPodを開放、ウィンドウズ支配を逆手に取って一気に普及を勝ち取りました。

サービスやライフスタイルを売る

明らかなのは、アップルがプロダクト(製品)志向を捨てたことです。iPodが売っているのは、サービスであり、デザインであり、ライフスタイルです。いわば業態転換を行なったのです。

カリスマ経営者ジョブズの存在

そして、ソニーではなくアップルにそれが可能だったのは、機動力を持ちうる適正な企業規模だったからでしょう。スティーブ・ジョブズという、カリスマで独断の経営者の存在も大きかったでしょう。(伊藤真哉 三重 ヒューマン)